Crags

Kampot/Kompong Trach



・概要
ポテンシャルの高いカンボジア南部の広大な石灰岩のクラッグ。将来カンボジアを代表する国際的なスポーツクライミングエリアになる可能性がある。しかし現在、壁の量に比べて開かれているルート数はまだほんの僅かだ。クライマーは総合的な力を問われるだろう。高さ20メートルを超える前傾壁が回廊状に連なるクロイスターウォール(Cloister Wall)、遠めに蓮のつぼみが連想される4段の前傾壁をトップへ重ねたロータスタワー(Lotus Tower)には、車を降りてすぐに取り付ける。ただしギャラリーも多い。牛やヤギがごちゃごちゃ混じってやかましい。シャークスフィン(Shark's Fin)周辺では岩を砕くセメント会社の作業員たちの姿がある。ダイナマイトによる爆破の際には注意が必要だ。フィッシュボール(Fish Bowl)やライアンズピナクル(Ryan's Pinnacle)、ケーブエリア(Cave Area)などにもそれぞれ数本のルート(すべてボトムアップ)が開かれている。いずれも個性の異なる特徴的なエリアだ。しかし、既存ラインのボルトは、ほとんど終了点のアンカーのみでランナー用は無い。カム類とその利用技術は必須だ。現時点では経験深いクライマーにしか勧められない。ベースとなるカンポットの町はフランス領だったころに栄えたリゾート。その面影は残るが、西にあるシアヌークビルに比べるとずっと静かだ。ただし内戦後復興が呼び込んだ急速な経済成長の影響で、再びリゾートとして息を吹き返す兆しを見せている。

・位置
カンポット州/コンポントラッチ

・アクセス
プノンペンから日帰りも可能。国道3号線を南に135km(乗り合いタクシーで約3時間、$7程度)。あるいは、カンポット行きのローカルバスがコンポン・トラッチを通るので途中下車($5)すれば良い。通常は、カンポットか、おしゃれなバンガローのあるケップ岬をベースにする。カンポットからは車で東へ1時間弱で、コンポン・トラッチに着く。小さな町だが活気がある。ゲストハウスもあるのでここをベースにしても良いかも。岩場へは、通り沿いの市場から、観光名所のコンポン・トラッチ寺院へのダートを辿る(看板あり)。寺院の門で入場料($1)を徴収される。クロイスターウォールはすぐ先のコーナーを曲がったところから名前通り回廊風に始まっている。寺院の入り口を過ぎてさらに行くと左手にロータスタワー、さらに進むと前方にシャークスフィンが見えてくる。寺院からシャークスフィンは道が荒れていることが多い。歩いても15分だ。

・ギヤ
ロープは60m。クィックドローは15本くらいあった方が良い。ここで紹介していないトラッドなルートを狙うなら、カムは通常サイズを2セット。プラス#4以上もあると心強い。無論、スリングも多めに。

・岩壁の特性
石灰岩。1ピッチが25m以上の壁もあるので60mロープを推奨する。マルチピッチのラインもトレースされている。ランナーは不連続、不規則なクラックと雨による侵食痕にカムをセットする。垂直から前傾、超前傾。

・ルート概況
終了点のアンカーがあるラインは3ケ所。ステンレスでしっかりセットされている。グレードは5.9、5.10a、5.10bだが、内容は濃い。初登を狙うなら下降が問題だ。良いレッジはあるがブッシュの根が張っていない。ジャンピングキットは必須だろう。力量にも因るがカムは概ね2セットは必要だと思う。さらにワイドにも対応出来るサイズ(#4以上)があれば心強い。

・トイレ
無し

・食事
行動食はカンポット、もしくはクラッグのある町コンポントラッチで購入出来る。

・駐車
無料

・脅威
陽射し、蛇、不発弾、セメント会社

・宿泊
カンポットに欧米人経営のゲストハウスが2軒ある。シングル10ドル〜。快適。食事も出来る。ケップビーチにもあるが値段がやや高い。25ドル〜。クラッグでのキャンプは薦められない。民家の無い広大なエリアだ。2005年にクメールルージュの残党によって数名の欧米人が殺害されている。

・トポ
アメリカ人クライマーBenjamin TiptonがカンボジアのMonument Books社からトポを出版している。
 → Rock Climbing in Cambodia (販売はカンボジア国内のみ)


Climbing Route Guide Book




Debut!! 『Angkor Climbers』初版
カンボジア・クライミング・ルートガイドブック
→ more info


・その他
観光スポットとして海辺から標高差1000mで屹立するボーコー山がある。何といっても涼しい。眺望も素晴らしい。フランス統治時代には頂上のカジノが栄えたらしい。今は廃墟となっている。広義には遺跡に違いないがアンコールとは何の関係も無い。しかし立ち寄る観光客は少なくない。大昔にカジノのために作られた自動車道路は無残に荒れているが、一応頂上まで伸びている。4駆ピックアップツアーがよく往復している。乗り心地は凄い。油断すると落ちる。往復30ドル程度。クラッグとカンポットの間にケップビーチがある。砂浜は狭いが貴重な海水浴場だ。夕暮れ時、遠く海岸線にそそりたつ影絵のようになったボーコーさんが素敵だ。海辺のクメールレストランでは近海の海老や蟹を茹でてくれる。おいしい。安い。





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